VAB型WRX STIのモータースポーツ

VAB型WRX STIのモータースポーツ 

<JAF全日本ラリー選手権>
 歴代のWRXが戦ってきた全日本ラリーにVAB型が導入されたのは2015年シーズンから。ラリー開幕当初に導入したのは、新井敏弘/田中直哉組、鎌田卓麻/市野諮組の2チーム。第2戦と第4戦では、新井/田中が優勝し、マシンの完成度が高いことを広く知らしめた。同年の第5戦では勝田範彦/石田裕一組もGRB型からVAB型へスイッチ。そのデビュー戦では見事優勝を手にしている。当初は、GRB型から100kg近く増えた車両重量が不安視されていたVABだが、ボディ特にリヤサスペンションまわりの進化によってトラクションが増大し、現在ではタイムも大きく向上している。WRX STIはまさに現在国内最速のラリーマシンといえよう。
 VAB型はこの2015年からはじまり、2019年までのシリーズチャンピオンを5年連続獲得している。2016年、2017年は勝田/石田組。2018年、2019年は新井/田中組がシリーズチャンピオンとして輝いた。 
<ニュルブルクリンク24時間耐久レース>
 2012年にGVB型WRX STIでクラス優勝を果たしたSTI NBRチャレンジは2014年にVAB型を投入した。クラスは引き続きSP3Tでの参戦。マシンは市販車のEJ20のエンジンと同等のファインチューニングでツインスクロールターボを採用。ミッションはGVB型のHパターンからシーケンシャルシフトに進化。

 VAB初参戦の2014年は、ナイトセクションでスロー走行していた車両と接触し修復のため順位を落とし、クラス4位入賞。2015年はマシンを左ハンドル化したほか、空力性能も大幅進化した。荒れたレース展開のなか、安定した走りでVAB型初のクラス優勝を獲得。2016年もクラス優勝を防衛し2連覇を達成。3連覇を狙う2017年はマシンのセンターデフを機械式から電子制御に変更。この年は走行中にエンジンルームより出火し、STI NBRチャレンジ参戦以来初のリタイアとなった。再びクラス優勝奪還を目指し挑んだ2018年は、レース後半の霧雨による中断中にピットロードでECUがダウン。メカニックの必死の作業によりコース復帰を果たすことになった。この懸命な復旧作業により、念願のクラス優勝を奪還。

 2019年は、2018年の教訓を活かし、ECUその他コンピュータの防水加工、更に処理速度を8倍に向上。さらに、トランスミッションをローギアードに設定することで加速を向上。結果、クラス優勝2連覇を果たした上に総合18位で、STI NBRチャレンジ史上最高位と並ぶ成績を残した。
 VAB型はこの2015年からはじまり、2019年までのシリーズチャンピオンを5年連続獲得している。2016年、2017年は勝田/石田組。2018年、2019年は新井/田中組がシリーズチャンピオンとして輝いた。 
<スーパー耐久シリーズ>
ST-2クラスで2013年、2014年と2連覇を達成しているTOWAINTEC Racing Teamが、2015年シーズンにVAB型を投入。DAMD MOTUL ED WRX STIは空力を意識したデザインで、S耐のレギュレーションに沿って市販車向けにも販売されているDAMDスタイリングエフェクトシリーズを装着している。新型となった2015シーズンもディフェンディングチャンピオンとして見事シリーズ3連覇の偉業を成し遂げた。その後も順調に連覇を重ね、ついに2019年には7連覇を達成している。 
<アメリカラリー選手権>
WRX STIのメイン市場であるアメリカ。そして街を走るクルマの10%強がスバル車と言われるバーモント州にファクトリーを構えるバーモントスポーツカーは、アメリカにおけるスバルワークスとして、SUBARUラリーチームUSAを組織してアメリカラリー選手権に参戦している。レギュレーションはFIAのものと異なり、アメリカ独自のものが運用され、世界最速のVAB型ラリーカーが走るイベントとなっている。「もしVAB型をベースにしたらWRカーが存在したら、こんなカタチなのかもしれない」というような拡幅されたボディにハイパワーなエンジンが積まれたマシンは見応え十分。トラビス・パストラーナ、クリス・アトキンソン、デビット・ヒギンズなどの錚々たるドライバーたちがステアリングを握った。 
<グローバルラリークロス>→<アメリカンラリークロス>
 グラベル(未舗装)部分とターマック(舗装)部分を織り交ぜたサーキットでぶつかり合いのレースを行うラリークロス。アメリカでは2011年から2017年までグローバルラリークロス(GRX)、2018年からは名称等が変更されアメリカラリークロス(ARX)が開催されている。

 このラリークロスにはバーモントスポーツカーが運営するSUBARUラリーチームUSAが参戦。2016年からはVAB型WRX STIをベースとしたマシンがデビュー。600馬力までパワーアップしたエンジンを搭載し、ジャンピングスポットに耐えることのできる高剛性のシャシーに改造されている。同年のロサンゼルス戦ではシリーズ初の日本人ドライバーとして新井敏弘も参戦した。 
<TCR>
 2014年7月に世界ツーリングカー選手権(WTCC)の改造範囲を広げた新型マシンを「TC1」、改造範囲の狭い旧型マシンを「TC2」とし、さらにその下に「TC3」を創設してツーリングカーレースのピラミッドを築く構想が発表された。同年12月にはTC3の名称が「TCR」に変更され、2015年からインターナショナルシリーズ、アジアシリーズ、ポルトガルシリーズなどがスタートした。

 TCRにおいて、VAB型WRX STIは2015年の後半からSTIベースチームでもあるイタリアのトップラン・モータースポーツが製作するFWD化されたスバルWRX STI TCRが参戦。2019年からスタートしたTCRオーストラリアシリーズではケリー・レーシングからモリー・テイラーとアンドレヘイマートナーの2台体制でエントリー。残念ながらトラブルも多く、シリーズ最終戦はミルダンモータースポーツが引き継ぐ形となった。